どうもデザてくです。
今回は「放射線被ばく相談員」についてご紹介します。
この資格は、JART(日本診療放射線技師会)の認定資格の一つです。
タップできる目次
認定資格とは
日本診療放射線技師会では、以下の5つの資格について認定しています。
これら認定資格はそれぞれの専門知識や技能に必要な教育を受け、本会が実施する認定試験に合格した者に与えられる資格です。
なお、これら認定資格は5年ごとの更新制度を採用しています。
JART認定資格一覧
- 放射線機器管理士
- 放射線管理士
- 医療画像情報精度管理士
- 臨床実習指導教員
- 放射線被ばく相談員
放射線被ばく相談員とは
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所の事故以来、人々の「被ばく」に対する関心は高まっており、
医療のみならず広く放射線被ばく全般の相談に対応できる人材として相談員の認定資格ができました。
認定試験について
受験資格
放射線管理士有資格者
放射線被ばく相談員講習会修了者
在宅講習修了者(e-Learning)
試験日程
年に2回、東京もしくは大阪で行われる会場での試験に参加する
問題数
マークシートによる択一形式で50問
試験料
会員は10000円(非会員は20000円)
試験を受験するためには、「放射線被ばく相談員講習会」を受講している必要があるのですが、
この講習会がハードルが高いです。
講習会受講資格
放射線管理士を有していること
講習会が申し込みが早い物順で開始数分で満員になる
講習会はJARTの本部(東京)のみで開催(2019年時点)
一度に受講できる人数がかなり少ないため、申し込みが少しでも遅れると受講できません。
そのため、全国的に見ても保有者がみわめて少ないレアな認定資格になっています(まだ一人も保有者がいない県もあります)
実際に放射線技師であっても被ばくに関して正しい知識を有していてかつ傾聴に理解がある人間は少ないです。
放射線に対してネガティブな印象の方々の相談に乗ることは大変ですが、
患者さんの心の苦しみが少しでも軽くなるお手伝いをしていきましょう。
試験対策
主にe-Learningの内容から出題されますが、多くの問題は倫理的に考えれば難しくない内容なので試験の難易度は高くありません。
講習会で実際にロールプレイングを通して学ぶ内容が、現場で資格を活かす上でとても重要です。
資格合格のための押さえるべきポイントをご紹介します
放射線被ばくについて
1秒間亜当たりのカウント数(cps)に計数管の測定効率を乗じた壊変率(dps)=ベクレル(Bq)を計算して求めます
屋内は壁の材質や地面からの距離に応じて低減係数が決められています
経口摂取・経気道摂取・経皮的侵入の3経路です
対外計測法とバイオアッセイについて、それぞれの意味と特徴について
食品から摂取した放射能(Bq)に実効線量係数(μSv/Bq)を乗じて内部被ばく線量を算出します
食品群ごとの規制値を理解する。放射能を含む食品からの被曝線量の上限は年間「1mSv」で、それぞれ食品群の規制値(kg/Bq)は一般食品100、乳児用食品50、牛乳50、飲料水10
ある閾値を超えると発症確率が大きく上昇する。生殖腺・目の水晶体・骨髄・胎児の閾値は覚えておきましょう
放射線誘発影響は線量増加分に対し、直線的に増加すると仮定されています
白血病:約2年。その他のがん:5~10年
200mSv以上の被曝で発癌増加が有意に検出されていますが、50−100mSv程度の低線量域ではリスクは自然に起こる確率に紛れて明らかでありません
被ばくによる遺伝的影響増加はヒトでは確認されていません(広島・長崎の被ばく2世調査でも遺伝的疾患の有意な増加は確認されていません)
放射線被ばく相談員の倫理について
倫理とは
「人間が自発的に自らの振る舞いをコントロールする姿勢であって皆が取るべきだと考えることに関わること」つまり人として守るべき行いや道のことです。
相談員は、ルールに従って患者に接するのではなく、心から向き合う(自発的である)ことが大切です。
相談員として求められるもの
相談者の人権を尊重する
相談者の生命を守る
相談者の利益を第一に考える
社会人として尊重され、信頼される人間
守秘義務について
相談上知り得たことに関しては相談員には守秘義務があります。
ただし以下の場合に限り例外となります
守秘義務の例外
相談者本人に許可を得た場合
自殺の恐れがあるとき
他社に危害を加える恐れがあるとき
上級者にアドバイスを受けるとき
法令に基づく開示請求
医療被ばく相談について
傾聴
「傾聴」は英語で「active hearing」です。アメリカの心理学者カール・ロジャースが提唱した手法として知られています。
- 共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。 - 無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
聴き手の私的な感情を取っ払い、無条件で肯定的に話を聴くこと。たとえ、話の内容に誤りや間違いがあっても、否定をせず関心を持って聴く技法。 - 自己一致 (congruence)
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、相手の話で理解できない点がある時は内容を確認しながら、真摯な姿勢で話を聴いていくという技法。
あくまで自分は第三者的立場です。相手を説得するのではなく相談者自身が正しい判断ができる手助けを行いましょう
相談者との相性が合わなかったり、自分の技量に限界を感じたりする場合は、速やかに他の専門家に引き継ぐべきです。相談員も無理しないこと。
カタルシス効果
心のもやもややイライラなど不安要素や苦悩を言葉にすることで安心感を得られる効果。
質問時の注意点
尋問のようにならないこと。「なぜ?」「どうして?」ではなく「どのように〇〇ですか?」と具体的に相手が答えやすい言葉で。
被ばく相談の目標
✖️) 正確な被ばく線量を提示すること
✖️) 相手を納得させること
⭕️) 相手にリスクを正しく理解してもらい、不安を解消してもらうこと
災害時の被ばく相談について
被ばくのリスクは2種類あります。
- 自発的:自ら望む活動によるリスク(医療被ばくなど)
- 非自発的:個人ではどうしようもないリスク(災害被ばくなど)
同じ被ばくでも医療被ばくか災害被ばくかで受容する許容範囲が異なります。
当然②の方が人は受容が困難です。②は①に比べ1000倍受容が難しいとされています。
市民が災害被ばくで不安に思うことは、
- がん
- 遺伝的影響
- 子供への影響
の3つで基本的に医療被ばくと同様です。
この3つについて説明できるようになれば、多くの質問に対応することが可能になります。
災害被ばく相談で大切なこと
リスクや数値の説明はその後です
初期対応での注意点
結論を急ぐ相談者に惑わされない
リスクの意味と大きさを客観的に評価できるよう説明する
被ばく相談は説得が目的ではない。決めるのは相談者
被ばくのリスクについて正しく知ってもらうことが目的です
専門家によって被ばくに対する意見の異なる背景
被ばくに対する視点は2種類あります
- 低線量でもリスクがあると考え無駄な被曝を避ける放射線管理の視点
- 低線量被曝では健康への影響は確認できないほど小さいと考える健康管理の視点
まとめ
医療においてなくてはならない放射線ですが、「被ばく=がん」というネガティブなイメージが根強く存在しています。
被ばく相談を通してリスクを正しく理解してもらい、不安を解消してもらえる放射線被ばく相談員の仕事はとてもやりがいのあるものです。
興味が湧いた方は是非取得して患者さんの力になってあげてください。
最後までご覧くださりありがとうございました。